広末涼子の「復讐」

青山劇場へ「つかこうへいダブルス2003」の二作目『飛龍伝』を観に行く。きょうが初日で主演は筧利夫と、そして広末涼子
実は同作を観るのは、一昨年8月に北区つかこうへい劇団内田有紀主演バージョンを観て以来なのだが、きょうが同作の中で全国全共闘と機動隊との決戦が行なわれる「11・26」その日だとは、劇がはじまるまでまったく気がつかなかった(それにしてもつかこうへいはなぜこの日を選んだのだろう。恣意的? それともそれなりの意味があるのか?)。
同作のストーリーについては、先述の一昨年に観劇した際にやけに興奮して書いた日記があるので(いま読み返したら、こっ恥ずかしいったらありゃしない。それでも読みたいという好事家はこちらをどうぞ)、今回は触れないでおくが、広末涼子が演じることで印象がまったく違ってしまったシーンについてだけは書いておこう。
それはクライマックスで、広末演じる全国全共闘議長・神林美智子が、こともあろうに早稲田大学全共闘の学生らに決戦の最前線のポジションにつくよう命じるシーンだ。早大全共闘のリーダーはその命令を最初は拒むものの、まわりの学生らから殴られて結局指定の位置につくことになる。そして、そのまま機動隊に攻撃を受け、「都の西北」を歌いながら散っていくのだが、それがぼくには広末の早稲田に対する復讐に見えて、思わず吹き出してしまったのである。
やはり早稲田の学生たちはなんとしてでも広末を担ぎ上げて、「広末派」を結成しておくべきだった。そうすれば、たとえ広末がやめる段になっても、8年しか在学できないこと(ちなみに欧米の大学には在籍年数の制限はないらしい*1)に対して大学に反旗をひるがえすとか、ある種の問題提起ができたのではないだろうか。ああ、もったいない。まあたしかにそれができなかったのは、広末の性格にも根本的な原因があったのかもしれないけどさあ、彼女の入学について冷笑的に眺めるだけで、結局何のリアクションもしなかった学生たちのほうにも問題あったんじゃねえのかな?
だからなんつーか、今回の芝居には彼女自身や演出のつかこうへいが意図するしないにかかわらず(いや、つかのことだからけっこう意識してたかもしれないが)、早稲田大学におけるそういったもろもろに向けてのアイロニーをぼくは感じてしまったわけである。
それにしても、広末本人は、果たしてあの舞台でボリュームいっぱいに流れた「都の西北」をどんな気持ちで聞いたのだろうか?