芥川賞報道

ワイドショーや夕方のニュース(というか情報番組と呼んだほうがいいか)での今回の芥川賞の報じられ方は愉快だった。まず、日本テレビの『情報ツウ』もフジの『とくダネ!』が、二人の受賞者をそれぞれ「優等生」(綿矢りさ)と「落ちこぼれ」(金原ひとみ)とキャラ分けしていたのには思わず笑ってしまった。いや、でもこういう見方はあながちバカにはできない。日本の文学賞では作品よりも作家のキャラが重視されるということが(その是非はともかく)、こうした報道のされ方一つとってもよくわかるからだ。
それよりもぼくが気になったのは、今回の一件が「若者の活字離れ」という現象に絡めて語られていたという点だ。今夕の『ニュースプラス1』(日本テレビ)を見てたら、近年いかに本が売れていないかと御丁寧にグラフまで出して説明されていたが、最近は活字本どころか最近はマンガも雑誌も売れていないんだから、このデータが即「若者の(あるいは多くの世代での)活字離れ」の証拠ということにはならないだろう。第一「若者の活字離れ」なんて20年……いや30年ぐらい前から言われていることではないか(それこそ村上龍がデビューしたころから)。結局のところ、「小説を書いて若くして賞を受賞する若者がいる一方で、若者たちのあいだでは活字離れという現象が見られる」という語り口は、一見すると事態の深刻さに言及しているようでいて、その実、現状の抱えるもっと重要な問題を回避した安易な紋切り型としてしかいまや機能していないように思う。これが「小説を書く若者は多いが、その一方で文芸誌の発行部数は新人賞の応募数よりも少ない」といったもっと具体的な指摘であれば、もうちょっと生産的な議論につながると思うのだが。
いや、そもそも「活字離れ」の一体どこが悪いのか、テレビの人たちはちっとも説明してくれない。ひょっとしたら、「活字離れ」の生んだ一番の弊害というのは、そういうふうに何が悪いのかをちゃんとした言葉で説明することなしに、いきなり「いまの若者は活字離れしている。だからいけない」と決めつけてしまうようなテレビ的な物言いなのかも。