椎名桜子を覚えていますか?

栗原裕一郎さんの昨日の日記(http://d.hatena.ne.jp/ykurihara/20040116)のコメント欄で、10年ぐらい前に何か文学界に美少女がトラウマになるようなできごとがあったのだろうか? ということが話題になったのだけれど、トラウマということでよくよく考えてみたら、坊っちゃん文学賞での女子高生の連続受賞(91年度・93年度)以前に、バブル期における椎名桜子現象にたどり着くということに気がついた。
思えば彼女の「処女作準備中作家」という肩書きは画期的だった。だって、作家の容姿と実力のギャップなんて問題以前に、肝心の作品よりもキャラ先行だってことを堂々と宣言しちゃったんだもん。そんなことは日本文学史上(いや、きっと世界文学史においても)空前にして絶後だろう。あれもバブル期だから許されたんだろうな、きっと。
そういえば高橋源一郎が10年ほど前に毎日新聞に発表した「史上最強の作家をつくる」という“企画書”(これは島田雅彦が編集長として毎日新聞の文化欄で連載していた「瞠目新聞」という新聞内新聞に掲載されたもの。同連載では「夢の企画書」というコーナーがあり、毎回いろんな人が様々な企画――その多くはほとんど実現不可能に近いようなもの――を提案していた)では、作家のキャラクターを美少女に設定したのち、肝心の作品は有名作家たちがゴーストライターとして執筆するという提案がなされているのだが、これなんかやはり椎名桜子のことが念頭にあったんだろうなと思わせる。