永江の60本

実はエロ本での仕事をこの日記に書こうかどうかちょっと躊躇していたのだが、つい最近web acrossでのインタビュー永江朗氏が次のように語っているのを読んで、少し書いてみる気になった。ここで語られているのは、永江氏がセゾン系の書店・アールヴィヴァンを退社後、『SMスナイパー』などエロ本仕事を始めてからのお話。

多いときはアダルトビデオ月60本。撮影に立ち会ったりAV女優にインタビューしたり、ビデオ評を書いたりしてました。エロ本仕事は重要。大事にやっていこうと思っています。人に言えない仕事、田舎の親に言えない仕事を必ずやっていくようにしないとダメになる。そう思っているんです。恥ずかしいことをする。そういう仕事が大事。基本的に、ものを書いたりすることは恥ずかしいことですから、それをメディア業界だとかいって胸を張ったり傲慢になったらダメですよね。おてんとうさまをまともに見れないようなのが、この仕事なんです。

ぼくの場合は多い時で月30本仕事でAVを立て続けに見て(時には掲載用の画像をビデオからファイルに取り込む作業もやっていた)ヒーヒー言っていたのだけれど、永江さんの60本には参った。内容にもよるが(たとえばだいたい似たような流れの単体10本を見て、それについて書き分けるのは本当に難しいのだ)数十本ものビデオを、ちゃんと見てレビューするのは至難の技なのだから。いやほんとに。でも《基本的に、ものを書いたりすることは恥ずかしい》というのはなんとなくわかるし、そういう後ろめたさみたいなものをなくしたらやばいな、とは思う。
とはいえ、先の芥川賞をめぐる週刊誌の記事で、金原ひとみが翻訳家である父親から「ここらへんの描写はもっと過激に」などといったアドバイスを受けたなんて話を読むと、やっぱり物を書くことに対する考えは家庭環境なり世代なりで違ってくるのかなとも思ってしまうが。