久々に日記らしい日記

と、今朝は浅田氏からそんなメールをいただいたことに正直驚きつつ、取り急ぎメールの引用の承諾を得るべく返信。午後からは知り合いの編集者氏との打ち合わせで神保町へ。湿度が高いせいか神保町にたどり着くまでにすっかり汗だくになってしまった(まあもともとぼくはかなりの汗かきなのだが)。打ち合わせ自体は一時間半ほどで終わり(この時ベテラン編集者氏からあれこれ聞いた話がまた面白かったのだが、ちょっとまだおおやけにできないこともあるので控える)、その後は書店街をまわる。
まず入ったのは東京堂寺田博編『時代を創った編集者101』(新書館)、『明治の文学第15巻 斎藤緑雨』(筑摩書房)、大森望豊崎由美文学賞メッタ斬り!』(パルコ出版)。斎藤緑雨については少し前に吉野孝雄*1による評伝『恋をなさず 斎藤緑雨伝』(これまた筑摩書房刊。ただしすでに品切れ)を読んだ際、緑雨が若くして物書きの仕事を始め、文壇では後進の坪内逍遥に業界の事情を教えてやったこともあるなどといった話を知り、ちょっと共感を覚えたものだ。あと、樋口一葉幸徳秋水ともそれぞれ交流があったということにも興味を抱き、改めてその文章を読んでみようと思ったのだった。
きょうはそのほか、結局買わなかったものの、後藤明生の遺稿集(『日本近代文学との戦い』柳原出版)が出たとか、国語教科書でおなじみの明治書院から『日本現代小説大事典』というあらすじ本の最終形態ともいえそうな事典が来月出るとか*2、久々にじっくりと新刊書店の棚を見てまわって知ったことも多かった。
それから三省堂の正面入口のスペースで開催中の「CAP展」を軽く眺めたあと(見覚えのある『スタジオボイス』の誌面や『ブルータス』の表紙が展示されていて、ああこれもそうなのかと思ったが)、建築専門の古書店・南洋堂へ。新建築社から出た『丹下健三』という3万円近くする大著をよだれを垂らして眺めたりするも、結局買ったのは中公新書の『臨海副都心物語』(平本一雄著)一冊だけ。それを近くの大戸屋でぱらぱら読みながら遅い昼食をとる。焼魚トロあじの開き定食に単品でじゃこおろしを注文したところ、定食にも大根おろしと酢で和えた細切りの大根がついていて(おまけに漬物もたくあんだった)大根づくしの食事になってしまった。
17時すぎに神保町をあとにし、今度は広尾に出て、都立中央図書館でちょっとした調べ物。先述の『丹下健三』を書架から引っ張り出してきて、「東京計画1960」*3について書かれた章をコピーをとる。大判の上に重いので、やや難儀する。そんな堅牢な造本にもかかわらず、藤森照信による文章はフランクで非常に読みやすい。いっそ図版をカットしてでも、この文章の部分だけを再編集して文庫版でも出してくれたらうれしいのだが*4
図書館を出ると、やけに風が涼しい。雲もすっかり切れて梅雨の中休みといった天気。その中を本とコピーした資料でパンパンになったかばんを背負いながら帰宅する。ふぅ。

*1:宮武外骨の甥。晩年の外骨とは幼少のころ同居した経験を持ち、後年その評伝を著すことになる。

*2:ここのところあらすじ本を追っかけているid:sikenさんに教えたところ、さっそく日記でこんなふうにあれこれ予想を書かれていた。しかしこれ一体どういう人が買うんだろ? やはり版元を考えると国語の先生なんかが多いのか。

*3:東京湾上に都市機能をそっくり移すというこの計画は『AKIRA』の「ネオ東京」のモデルともいわれる。

*4:そんな可能性があるとすれば、都築響一の『TOKYO STYLE』『珍日本紀行』といった大著を文庫化したり、また藤森照信の著書もラインナップに入っているちくま文庫あたりだろうか。