一体何度自主映画から卒業すれば本当の自主映画にたどり着けるのだろう

午後から、野方区民ホールにて開かれた自主映画上映イベント「映像温泉芸社その11 孤立自主映画学園卒業式」を観に行く。以下、印象に残った作品について感想を箇条書き。

●酒徳ごうわく監督(id:atamaizer)『クピレンジャーVSアタマイザー5』
酒徳監督の代名詞となりつつある「クビレンジャー」シリーズの最新作。イエローを主人公にした良いお話なのだが、よく考えたらタイトルに偽りがありません?(笑)個人的には予告編で流された、ピンクメインの回が気になります(でもこれは毎度のお約束ながら、あくまでも純粋な「予告編」なんでしょうがw)。でもこれでとりあえずシリーズ最終作なんですよねえ。なんだか寂しいなあ。あ、この作品は今月15日にはDVDが発売されるみたいなので、要チェック。

●越坂康史監督『できちゃった結婚
同作は、このイベントでかかる作品としては珍しく「最初からドキュメンタリーとして撮られたドキュメンタリー作品」*1だった。その内容は、タイトルからもあきらかなように、「できちゃった結婚」することを決意した監督とその相手が結婚にいたるまでの経緯を追った、「私映画」である。最初は何かドロドロしそうでやだなーと思ったのだが、観てみるとこれが案外面白かった。何より監督のお母さんのキャラクターがよかった。たとえば、監督が結婚することを打ち明けたシーンでの、「結婚しない人は、いつまでも独身貴族の気分が抜けないからねー」というお母さんの発言は一見もっともらしく聞こえるが、文脈的に何かおかしくて笑えた。

●VJコミックカット『スーパーマサオアドバンス』
ライブパフォーマンスとして上映された作品。これは、漫才コンビ・スーパーマサオブラザーズ(元ネタは言うまでもなくあのゲームですw)のボケ役に、適切な合いの手やツッコミを入れながら漫才を進めていくというRPGをパロッた作品(画像はドット絵)で、舞台上にて芸社メンバーの前田さんが実演。インタラクティブアートやメディアアートと呼ばれるジャンルでは、この手の作品はいまではそんなに珍しいものではないのだろうけど、自主映画の上映会でこういうものが登場したのはちょっと新鮮だった。

●高岡晃太郎監督『梅珍獣』予告編
告知のコーナーで上映されたうちの一編。その元ネタは、同じく予告編が流された『梅心中』という自主映画。ようするに自主映画をパロディにした自主映画というわけだ。しかしパロディというのは本来、誰もが知っている作品がその対象にされるもののはずなんだけど、こういうのもパロディっていうのかな? だいたい予告編が流れたばかりで内容もよくわかっていない映画なのに、いきなりそれに続いてそのパロディ作品らしき映画の予告編が流れるというのが衝撃だった。
あとで調べてみたところ、『梅心中』というのはこんな映画らしい。今月末にも下北沢のトリウッドでもうすぐ上映されるみたいで、それと併せてそのパロディ作品『梅珍獣』も同劇場で上映される模様。しかし同時上映なんて、『梅心中』の監督さんは度量が広いなあ(笑)。

●中村犬蔵監督『デンキネコ対メカデンキネコ』
今回の上映作品の中でぼくが一番感動した作品。これは犬蔵監督がつくり続けているフルCGアニメ「デンキネコ」シリーズの最新作なのだが、これまでの作品と同様短編かと思いきや、今作は30分以上もある長編だった。ストーリーは、地上げ屋に身をやつして商店街の土地を奪い取る宇宙人たち(彼らの戦闘ロボットがメカデンキネコである)と、さらに巨大怪獣デンキネコの襲撃にたまりかねた商店街の住民たちが力を合わせてこの緊急事態に立ち向かうというもの。その展開にぐいぐいと引き込まれるとともに、随所に散りばめられた細かいオタクネタに大いに笑わせてもらう(たとえば佐藤慶日本国憲法の朗読が挿入されるシーンとか)。CGの完成度も高く、これはもうソフト化して、より多くの人に観てもらうしかないでしょう!

トータルで4時間(途中2回の休憩があったが)という長丁場だったにもかかわらず、ちっとも時間を感じさせなかった。しかも入場料は1000円というのが、お得すぎ。『デンキネコ対メカデンキネコ』だけでも十分元を取ってお釣りが来たという感じである。
というわけで、芸社の皆さん、どうもお疲れ様でした!

*1:これまでに同イベントでかけられた作品には、たとえば撮影中に思いがけず巻き込まれたトラブルの様子を撮影・編集したものなど、「意図せずしてドキュメンタリーになってしまったドキュメンタリー作品」はあったのだが。