国会図書館へ行こう!

正午に予約を入れていた歯科医へ。先週虫歯を削って金属を詰めた部分が噛むたびに微妙に痛むので、改めてセメントを用いて詰め直してもらう。そのほか、歯石の除去など歯の掃除を一通りしてもらって、今回の治療はひとまず終了。
午後、久々に国立国会図書館へ赴き、調べ物。ちょっと仕事で大泉実成氏の『消えたマンガ家』の新潮OH!文庫から2分冊で出た版をあたる必要が出てきたのだが、腹立たしいことにすでに品切れ(つい4年前に出たものなのに……)。ネットで全国の古書店の在庫や、都立中央図書館の蔵書を調べてみるも、原版の太田出版から出た版は見つかるというのに、文庫版は皆目見つからない。というわけで、これはもうしゃーないと観念して、国会へ行くことにする。
一度でも国会図書館を利用したことがある人なら御存知だろうが、ここで調べ物をするとなるととにかく時間を食う。しかも開館時間が短いし……と思ったら、どうやら今月1日から開館時間が大幅に延長され、19時閉館(複写受付は18時まで)となったらしい。おお、やればできるじゃねーか……と、感心したのも束の間、入館しようとするとゲートの前に短いながら行列ができている。何事かと思えば、これまた今月から始まったシステムで、入館に際しては利用者カードを発行してもらう必要があるという。いや、これまでにも利用者カードはあったのだが、いままでとは違うのはこれがICカードへと取って代わったということだ。これによって、コンピュータの端末に一枚のカードを差し込むだけで閲覧も複写の申し込みもできるようになり、いままでのいちいち申し込み用紙に書き込んで受付に提出するというシステムからは格段に効率化が進んだのは間違いない。
しかし、どうにも解せないのは、カードを発券してもらうのに、いちいち氏名・生年月日・住所・電話番号と個人情報を入力しなければいけないということだ。たった一回限りの入館で、しかも原則的には館内での閲覧しか許されていない(つまり館外への貸し出しは行なっていない)国会図書館で、ここまで身分証明をする必要が果たしてあるのだろうか?
それから、もう一つ気になったのは、職員が館内いたるところに立っていて、少しでも利用者がまごついていたりすると、すぐさま駆け寄ってきて「懇切丁寧」に説明してくれる、ということだ。いや、たしかに新しいシステムを導入したばかりなのだから、説明が必要なのはわかる。わかるんだけど、訊ねてもいないのにいきなり説明して来られるのは、正直うっとうしい。だいたい入口では利用に際しての案内が書かれたプリントまで配布しているのだから、これはあまりにもサービス過剰ではないか。もちろん機械に慣れていないお年寄りなどにとっては、一から十まで手取り足取り説明する必要はあるかもしれないが、原則的には質問を受けたら説明するというので十分だと思う。
それにしてもICカードといい過剰な説明といい、今月より始まった国会図書館のシステムは、まさにITによるソフトな管理社会――たとえて言うなら、人々がニコニコしながらお互いを監視し合う社会――の雛型ではないだろうか。便利になったのはもちろんありがたいのだけれど、そう考えると手放しではどうも喜べない。
とはいえ、100ページ以上コピーを申し込もうとすると、二回に分けて申し込んでくれと言われたり、融通の利かない部分はまだ残っていた。やっぱり国会図書館に来るのは、ほかで探しに探してどうしても見つからない場合にかぎる、と改めて感じた次第*1

【追記】上記の日記を書いてから、友人から、国会図書館では以前より入館の際に申し込み用紙に記入して身分証明をしていた、とのメールをもらった。言われてみれば、たしかにぼくも以前ここを利用した際、用紙に住所・氏名を記入してから入館した憶えがある。しかし生年月日まで記入していたかどうか。というのも、ぼくが初めて国会図書館を利用した際、入口で係員に呼び止められ、生年月日を訊かれたことがあるからだ。その当時ぼくはまだ18歳で、国会図書館の利用が認められる20歳に満たなかったため、とっさに年齢を二歳ごまかして事なきを得たのだった(ただし、国会図書館のHPを見ると、現在の利用資格は18歳以上となっていた。一体いつの間に変更されたの!?)。しかし、このたび導入された新システムでは、もはやそうしたごまかしも利きそうもないが……いや、コンピューター相手だからむしろごまかしは利きやすくなったのか。
ちなみに国会図書館では、入館の際にいちいち個人情報を入力しなくても済む上、館外からも複写の申し込みができる「登録利用者制度」というのも開始されている。しかしこれに登録するにはパスポートや免許証など、住所や生年月日を明記した身分証明書が必要だという。国会図書館のHPでは登録者に対する個人情報の保護についても記されているが……うーむ、どこまで信用していいものやら。
少なくとも登録者、登録していない一般利用者にかかわらず、国会図書館への入館にあたっては何らかの身分証明を求められるわけで、こうしたシステムは、「真理がわれらを自由にする」という国会図書館本館の貸し出し窓口の銘板に刻まれた言葉に象徴されるような“国民に開かれた図書館”という理念からは、大きくかけ離れているような気がしてならない*2

*1:まあ、ぼくがきょう見たかぎりでは唯一、若い女性職員が増えたというのが救いかな、とは思いましたが(笑)。

*2:ちなみに終戦直後の一時期、国会図書館の副館長を務めた美学者の中井正一は、開架式化も検討していたというが、現在にいたってもそれが実現する気配はない。