後輩。

この週末に大宅文庫国会図書館都立中央図書館国際子ども図書館とまわって、ようやく必要な資料がそろい、さあ書こうと某誌の原稿に取りかかったところへ、実家の母親から電話が。何事かと思えば、つい先日、『遮光』により今年度の野間文芸新人賞受賞が決まった中村文則*1という人が、どうやらぼくの高校の一年後輩らしい、てな話だったので、いささか拍子抜け。
何でも、地元紙の、特に地方面などはこの話題で持ちきりらしく、事実、WEB版の記事を見てみたら、彼の高校時代の恩師のほか、市長のコメントまで出ていた。野間文芸新人賞って、芥川賞なんかとくらべたらずっと地味な賞なんだけどなー(その分、実力派が獲ることが多いとは言われてるけど*2芥川賞はとっていない村上春樹もこの賞は受賞してるし)。これで騒ぎになるなんて、やっぱり田舎だわ。……ま、とにかく、うちの母親はどうやら「こういう後輩も出てきたんだから、おまえも頑張れ」と言いたくてわざわざ電話してきたようである。
それにしても、まさかうちの母校から純文学の作家が出るとは思いもしなかった。というのも、愛知県の管理教育が一番厳しかった時期に開校したというのもあって、受験勉強一本槍で、バイトもバイクも禁止、文化祭や体育祭もぼくらが高校に入るまでなかったほどだし(これは前にも書いたっけ)、はっきし言ってつまんない学校だったから。まあ、そういう環境だからこそ逆に……ってのは、あるのかもしれないけど。
あと思ったのは、10年ほど前に渡部直己すが秀実が『それでも作家になりたい人のためのブックガイド』*3で、灘高出身の中島らも(大学は大阪芸大)などを例にあげて、「これからはひょっとしたら出身大学よりもむしろ出身高校のほうが重要になってくるのかもしれない」というようなことを言っていたけど(うろおぼえ)、地元では中の中ぐらいのレベルであるうちの高校から作家が出てくるとなると、もはや高校ですら問題じゃないんじゃねーの!? ということだった。……って、そんなことを赤点ばっかしとってて、いまだに高校を卒業できないという夢にしょっちゅううなされているおれが言うなよ、おれが。第一、中村君に失礼だ。
と、いうわけでして、もし文芸誌関係の方がこれを読んでいらっしゃいましたら、ぜひとも中村文則君をぼくにインタビューさせてください。実現したあかつきには、母校の悪口を二人でさんざん言い合いたいと思っています(ひでー)。
そして中村文則君へ。このたびは本当におめでとう。改めて心よりお祝い申し上げます。まさかこんなブログもどきなど読んでいないとは思いますが、万が一読んでいたら、このろくでなしの先輩の名前を心の片隅にでも小さくメモしておいてください。おれもいつかビッグになるはず……いや、絶対なりますので*4。では、いつかどこかでお会いしましょう。

*1:今回の野間文芸新人賞はもう一人、中村航さんと奇しくもW中村の受賞となったわけか。主要な文学賞で同姓同士が受賞するのは、芥川賞高橋三千綱と高橋揆一郎が選ばれて以来のことではないだろうか。ただ、文則さんのほうは、新聞の記事を見たら、本名は全然違っていたのだが。むしろ本名のほうがよっぽどペンネームらしいと思った。

*2:野間新人賞が実力派向けと言われるのは、芥川や三島みたいに「作家のイメージ」を背負っていない分、変に「キャラ立ち」してないからではないだろうか……とか言ってみるテスト。

*3:最近この本の新版が出たので、本屋で手に取ってみたら、たまたま開いたページに「藤枝鎮男」という誤植を見つけ(正しくは「静男」ね)、何だかひどくがっかりしてすぐに書棚へ戻してしまった。

*4:ビッグはビッグでも、ビッグマウスだなんて言わないで。