日本に恋した純情乙女

先週ひいた風邪がズルズルと続いている……といってるそばからハ、鼻がズルズル……いや、別に熱が引かないというわけでもなく、鼻水と咳が出るといった程度の軽い症状なのだが、頭にもやがかかった感じがずっと続いている。まあ、もともと大してクリアな頭なのではないのだから、いつもとあまり変わらないと言えば変わらないのかもしれないけど。
さて、きょうは34回目の三島由紀夫の命日、いわゆる憂国忌だった。三島由紀夫といえば、もう14年近くも前に『スタジオボイス』で「再考三島由紀夫の檄」という特集が組まれたことがあった。『スタボイ』と三島という組み合わせが何だか妙だが、巻頭にはあの日、三島がクーデター決起をうながすため、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地でばら撒いた例の「檄文」が掲げられており、それに対して様々な人たちがコメントを寄せている。この人選が『スタボイ』らしくて、廣松渉橋本治がコメントを寄せる一方で、ミュージシャンのパンタ、細野晴臣巻上公一、マンガ家の久住昌之などのコメントも載っているという具合。特にぼくが一番気に入っているはこの人のコメント。

 私は一個の女子であり、別に武士でもなんでもないまんが家さんです。「コレは熱烈な片思いのラヴ・レターである」と思いました。もしかすると三島由紀夫は「日本」に恋の自爆をした純情乙女だったのかもしれません。何となく「ファザコン」の「少女」としての「三島由紀夫」をみてしまいました。おしまい。

 ―岡崎京子「これは熱烈な片思いのラブレターである。」、『スタジオボイス』1991年2月号

たしかに檄文の《われわれは四年待った。最後の一年は熱烈に待った。もう待てぬ》という部分などは、特にラブレターっぽいかもしれない。