問題はすでに30年前にすべて現われていた!

ついでなので、読了後ずっと紹介しようと思っていた『波瀾興亡の球譜』について書いておく。外資系のペプシ西鉄球団を買収する計画があったという逸話は、今年、ダイエーが球団を外資系企業のコロニー社に売却するという噂が一時飛び交ったことを彷彿させるのをはじめ、同書を読むと、西鉄が身売りされた1970年代初めのプロ野球界の状況と現在のそれとが驚くほどに酷似していることに気づかされる。
たとえば、近鉄オリックスとの吸収合併の話が出る直前、球団名をスポンサーに売却するという計画が持ち上がったものの、「前例がない」などと他球団からの強い反対を受けて結局立ち消えとなった。しかし、そもそもロッテだって、大映球団のスポンサーとしてその名前を冠したのが球界参入への足がかりとなっているわけだし、西鉄球団から買い取られたライオンズがその名に冠した「太平洋クラブ」「クラウンライター」にしても、単なるスポンサー名にすぎない(実際に球団を経営していたのは「福岡野球株式会社」である)。前例がないなんて、ただ忘れられていただけなのだ。
また当時よりパリーグの球団はどこも経営不振に悩み、阪急・南海・近鉄の3球団などは、同じ関西の私鉄を親会社に持ちながら人気ではセリーグ阪神に大きく水を開けられていることから、本気で1リーグ化を望んでいたというし、西鉄売却と同じ72年のオフには、大映からロッテへ、東映から日拓へとパリーグの球団の身売りが相次いだことも今年の球界再編騒動と重なる。ついでに言えば、これら新球団が初めてのシーズンを迎えた73年には2シーズン制での前期・後期の優勝チームが争うパリーグのプレイオフが始まっている*1。もちろん、今年から始まったペナントレースでの上位3チームが争うプレイオフとは異なるが、パリーグの人気獲得のために始まった点は共通する。
いや、これは共通するとか似ているとかいうよりも、結局のところこの30年間、球界の根本的な問題が放置されてきただけなのだろう。
なお、太平洋クラブ/クラウンライター・ライオンズの球団経営にあたって、球団代表の坂井保之は、本拠地である平和台球場を経営する福岡市の非協力的な態度に、78年に西武に球団を売却するまで終始悩まされ続けたという。このことが、今後、楽天球団とその本拠地となる仙台市にとって教訓となればいいのだが。

*1:2シーズン制は、前期で優勝したチームがプレイオフに向けて力を温存するため後期であからさまに手を抜くなどその弊害が噴出したものの、結局82年まで10年にわたって続けられることになる。