金城ふ頭を渡る風

そんな変貌する名古屋を象徴するものに昨秋10月6日に開業したあおなみ線と、同日に環状運転を始めた名古屋市営地下鉄名城線がある。きょうはその二つの路線に、別に目的地があるわけでもないのに乗ってみた。というのも、金がなくて買い物も観光地めぐりもまともにできないという身上で旅行気分を味わおうとしたら、結局これぐらいしか思いつかなかったのだ(電車賃のほうは親から回数券をくすねて借りて捻出したので気にすることはなかったが)。
あおなみ線名古屋駅から名古屋市の南西部を縦断して名古屋港の金城ふ頭までを結んでいる*1。もともとJRの貨物線だったルートを第三セクターで旅客線にしたという点では、東京のりんかい線と同じだ。あ、いや、厳密に言えばりんかい線は計画段階で貨物線から旅客線に改められた路線だから、ちょっと違うか。それでも両者とも都心から臨海部に向かって走り、おまけに終点の金城ふ頭には国際展示場というりんかい線の沿線にあるのと同じ名前を持つ施設があったりして、存在としてはあおなみ線りんかい線はよく似ている。
あおなみ線はずっと高架を走っていて、金城ふ頭に近づくと臨海工業地帯の風景が車窓一面に広がり、なかなかダイナミックだ。とりあえず金城ふ頭駅で降りてみると、まわりには海外へ輸出される大量の自動車が並べられたスペースと、船の形をした遊具なんかがぽつんぽつんと置かれた小さな公園や国際展示場の建物などが整然と立ち並んではいるものの、ほとんど人気がなくて寂寞とした雰囲気が漂っていた。それでも対岸にある新日鉄の工場群からは絶え間なく煙が立ち昇り、その風景を工場のさらに向こう側にある名古屋市郊外の町で見ながら育った自分にはすごく懐かしいものに感じられた。原風景とはたぶんこういうものを言うのだろう。ちなみに金城ふ頭にある通りには、メキシコ大通り、ロサンゼルス大通り、南京大路とすべて名古屋市姉妹都市の名称がつけられていて、何だかこっ恥ずかしい。
余談ながらあおなみ線の車内では、乗客がこの路線の名称を口にするたび「おなみ線」と頭文字の「あ」にアクセントを置いて呼んでいるのが妙におかしかった。まあ名古屋弁のアクセントの遣い方からすれば正しいんだけど。そもそも名古屋という地名も、生粋の名古屋人に発音させれば「ごや」とやっぱり頭文字にアクセントが置かれるわけだし。

*1:この「金城ふ頭」という駅名は、漢字の使用制限からか「埠頭」が「ふ頭」になっているのがどうにもすっきりしない(これはたとえば子供を「子ども」、覚醒剤を「覚せい剤」などと書かれるのと同じぐらいすっきりしない)。これだったらいっそ「金城ふとう」とすべてひらがな表記にしちゃえばいいのに。実際、名古屋市営地下鉄には「いりなか」(=杁中)という駅があるんだし。