本名は「きみふさ」かと思いきや、どうやら本名も「こうぼう」らしい(参照)

ネットで注文していた、安部公房のエッセイ集『死に急ぐ鯨たち』(新潮文庫、1991年)が高原書店より届く。パラパラと目を通してみると、ワープロの話とか禁煙の話とかチョムスキーの普遍文法の話とか惹かれるものばかりで、これからじっくり読もうかと思う。
安部公房といえば、最近矢崎泰久の『「話の特集」と仲間たち』(新潮社、ISBN:4104736015)を読んでいたら、安部が1967年に三島由紀夫川端康成石川淳らとともに、当時の中国の文化大革命における言論弾圧に対し抗議声明を出したそもそものきっかけが記されていて興味深かった。それによるとこの話は、安部と三島が矢崎を交えて一緒にバーで飲んでいた時に意気投合して、それぞれが石川と川端に参加を求めるということで一晩のうちにまとまったものであったらしい(三島はこのいきさつを4人が全員死ぬまでは公表しないよう矢崎に口止めしたという)。この声明自体についてはぼくも以前から知っていたものの、なぜこのメンバーだったのか、やはり三島と川端が仕掛けたものだったのだろうかと思っていたのだが、ようやくこれで疑問が解けた。しかし矢崎泰久も思いがけない場面に出くわしているもんだなあ。編集者冥利につきるというか。