ダーフク先生、おかしくないですか?

きのう、御厨貴編『歴代首相物語』(新書館)と宇治敏彦編『首相列伝』(東京書籍)という本を買ったと書いたが、この手の歴代首相の総解説的な本をぼくはすでに何冊か持っている。たとえば毎日新聞社の『1億人の昭和史』シリーズの一冊として出された『三代の宰相たち』上下巻(1982年刊で伊藤博文から鈴木善幸までがとりあげられている)や、昭和戦後期の首相をとりあげた渡邊昭夫編『戦後日本の宰相たち』(中公文庫、ISBN:4122038278)のほか、最近だと、福田和也の『総理の値打ち』が先月文春文庫から文庫化された(ISBN:4167593041)ということでさっそく購入した。
しかし、『総理の値打ち』には、読んでいてちょっと気になった点がある。それは首相の代の数え方だ。『総理の値打ち』では、歴代首相が就任した順番がそのまま代としてカウントされている。しかしぼくが知るかぎり、ほかの本ではこうした数え方はされていない。たとえば吉田茂は、『総理の値打ち』では「第三十二代総理大臣」となっているのに対して、ほかの本では「第四十五代・第四十八代〜第五十一代」と、第一次から第五次まで吉田が組閣を行なった回数がそれぞれ一代としてカウントされているのだ。そもそも、一人につき最長でも二期八年までと在任期間が決まっていて、一度辞めれば返り咲きは許されていないアメリカ大統領などであれば就任順に代をカウントしてもいいのだろうが、一旦辞めてもふたたび首相に就くことが認められている日本の内閣制度では、そのような数え方をしてはちょっとおかしなことになるのではないだろうか?
そう思って、首相官邸のホームページを見てみたところ、以下のような記述があった。

歴代総理について
<就任人数>

 総理の就任代数は、総理に任命され内閣を組織してから総辞職するまでを一代と数えている。5回も総理に就任した吉田総理のように1人で数回にわたり総理に就任することもあるため、第○代の総理という場合の総理の就任代数は総理の実人数よりも多くなる。

http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/index.html

な〜んだ、単に福田和也が間違えていたというだけなのか。いや、ひょっとしたらこれは、首相に就任したからには途中でやめることなど考えず、力を尽くして自分の任期をまっとうすべきとの思想から福田氏が仕掛けた「意図的な間違い」なのかもしれない……?