多摩の相似形

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明治天皇行幸の地であることを記念して建てられた旧多摩聖蹟記念館(画像右上・左下。現在は都立桜ヶ丘公園内にある)と、多摩センターにある複合文化施設パルテノン多摩(同左上・右下)。
いずれも京王相模原線および小田急多摩線の沿線にある施設(最寄駅は前者が「永山」、後者が「多摩センター」)で、丘の上にあるというほかに、アーチが中心(それぞれ記念館と池)を半円形に取り囲んだそのデザインに類似性を感じる。おそらくパルテノン多摩聖蹟記念館の意匠を「引用」したと見るのが正しいのではないだろうか。
……と思ったら、似たようなことをすでに10年以上前に書いていた人がいたりして。

 (引用者注―パルテノン多摩の)上にあったのは、広い石畳と丸い池。石畳の周りをアーチが取り囲んでいる。大きさは違うけれど、聖蹟記念館の真ん中(引用者注―アーチに囲まれた真ん中の建物には明治天皇の騎馬像がある)を抜いてまわりの柱だけがあるような感じだ。なにもない空間。「空虚な中心」という言葉が浮かんだ。(中略)
 そういえばここに福武書店があるのも象徴的だ。多摩一帯はいまや大学だらけだ。福武の「進研ゼミ」をバイブルに育った大学生が、ここでその総本山を見るという仕掛け。「キティちゃん」で育った子どももその王国=サンリオ・ピューロランドをここで見るのだ。そしてその都市の空虚な中心パルテノン多摩では、連日、演劇や演奏会などの祝祭がくりひろげられる。
 上島敏昭「『聖』と『不浄』を結ぶ武蔵野の鉄道・京王線」(『別冊宝島・シリーズ歴史の新発見 帝都東京』1995年、宝島社)


パルテノン多摩を京王・小田急多摩センター駅方面から望む。前面の巨大な階段をのぼったところに、上の画像にあるような、池を金属製のアーチが取り囲んだ庭園がある。