学生運動と1970年代のサブカルチャー

 日経ビジネスオンラインの「日刊新書レビュー」にて、霜月たかなかコミックマーケット創世記』(朝日新書)をとりあげた(ここから読めます)。
 レビューでとりあげた以外にも、本書には興味深い記述がいくつもあった。たとえば、批評集団「迷宮'75」結成にあたり「運動理論」を論議する場で著者が書き残した〈我々は、主体的にマンガに関わりかつ、コミュニケートを求める者にその場を解放する!!〉という走り書き(この文はレビューでも引用したが)。こうしたアジ演説めいた文面について著者は次のように説明している。

 まるで学生運動の立て看板のような文面と思われるかもしれないが、実際はくだけた会話をしていても文字にするとこうなってしまうのは、何か行動を起こす時の方法論として学生運動のなかで確立されたそれが、それなりに使い勝手がよく、有効だったためである。 1970年代という時代のなかで僕も亜庭じゅんも米やん(米澤嘉博――引用者注)もひと通りは学生運動の波のなかをくぐり抜けているし、当時の大学生にとっては基礎教養のようなものだったと思ってもらえばいいだろう。

 学生運動の方法スタイルというのは、いしいひさいちの『バイトくん』に登場する「安下宿共闘会議」でも踏襲というかパロディの対象にされているし、あるいはキャンディーズファンの全国組織「全国キャンディーズ連盟」(全キャン連)などにも引き継がれているように思われる。全キャン連はその名前からして、全学連(全国学自治会総連合)のもじりだ。
 ウィキペディアの「全キャン連」の項目を読むと、その活動時期はコミックマーケットが始動したのとほぼ同時期だということがわかる。誰か、回顧録とか書いてくれないだろうか。
 ところで、全キャン連が学生運動のスタイルを踏襲したのに対して、その後のアイドルのファンクラブや親衛隊というのが、どちらかといえば暴走族や右翼にも似たスタイルをまとったのはなぜだろう? 気になるところだ。