Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

旧吉田茂邸全焼を機に浮かぶ「文化財」をめぐる疑問

 早朝、神奈川県大磯の旧吉田茂邸がほぼ全焼。以前、一般公開された際に応募して抽選に漏れたものの、将来的に県立公園として整備されると知って、そうなればいつでも見られると期待していただけに、こんなことになってしまってショックだ。
 毎日新聞この記事では、《住宅を所有・管理する西武鉄道によると、警備員1人が敷地内に常駐し、漏電警報装置と消火器はあったが、火災報知機やスプリンクラーなどの防火設備はなかった。文化財ではないため消防法上の設置義務はない》と説明されていたが、なぜ、西武は、文化財に登録しなかったのだろうか。単に申請を怠ったから? それとも申請には動いたものの、戦後の建物で比較的新しいため、なかなか登録が認められなかったのか?
 とはいえ、いまでは、国宝や重要文化財以外に「登録有形文化財」という制度があり、近代建築を中心に登録が行なわれているし*1、たとえ文化財でなくても、あきらかに歴史的にも建築史的にも――ちなみにこの邸宅を設計したのは昭和を代表する建築家の一人・吉田五十八――重要な建物だったのだから、防火設備を設置しておくべきだったのではないか。まあ、いまさらとやかくいっても後の祭りだが……。

*1:最近でも、建て替えをめぐって日本郵政鳩山邦夫総務相が対立した東京中央郵便局も、結局、登録有形文化財として登録することで決着した(参照)。