純文学を仮想敵視していた松本清張

 中日新聞夕刊の文化欄にて連載中の佐野眞一「全身怨念作家 編集者の見た松本清張」。昨日掲載の回では、中央公論社の全集『日本の文学』に清張を入れるかどうかで大もめしたという話がとりあげられていた。
 全集の編集委員のうち三島由紀夫が清張を入れることに断固反対した、という話は聞いたことがあったが、これに対して川端康成は賛成だったものの、中央公論側が提示した今東光との二人巻としてはどうかという折衷案に「今東光は文学じゃない」と猛反対、結果的にこれが命取りになった……という事実は初めて知った。ちなみにその日会議を欠席した谷崎潤一郎は、電話で意見を聞いたところあっさりと賛成したらしい。
 この話は後年、その顛末を記した高見順(彼も『日本の文学』の編集の一人だった)の日記が公刊されたのち清張にも伝わったが、清張自身は「谷崎、川端、三島の純文学三人組が反対したに決まってる」と信じて疑わなかったという。もっとも、中央公論の清張担当だった編集者によれば、そんなふうに純文学への「仮想敵」視していたことが清張の創作のモチベーションとなっていたのではないかというのだが。
 それにしても、「今東光は文学じゃない」って、川端康成今東光とマブダチじゃなかったのかよ。今が参院選に出馬したときには選挙事務長までやってるというのに。それとこれとはべつ?