Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

「地図中心」の午後

午後、「アメリカ伊能大図 里帰りフロア展」を観に幕張メッセまで足を伸ばす。今回展示された「伊能大図」とは、国土地理院のサイトによれば次のようなものだ。

伊能大図とは、1800年代に伊能忠敬が作成した「大日本沿海與(よ)地全図」の中の一種で、沖縄を除く日本全土を214面でカバーした、縮尺3万6千分の1の実測地図です。この大図は、幕府に献納された正本及び伊能家が保管し後に明治政府に提出した副本はすでに焼失しており、明治初期に国土地理院の前身である陸軍参謀本部などにより複写されたものが、2001年に米国議会図書館で207面発見されました。
 http://www.gsi.go.jp/1ino-zu/main.htm

伊能忠敬はもともと千葉中部の上総国(幕張のある千葉市よりはやや南だが)の人だから、今回の展示は文字通りの里帰りである。京葉線海浜幕張駅に到着すると、大勢の親子連れでごった返していて驚いたのだが、その多くは同時開催のワールドホビーフェアの客だったようで、伊能大図の会場のほうはさほどの混雑でもなくてやや拍子抜け。まあ、その分、閉場の5時すぎまでじっくり地図を見ることができた。
考えてみたら、伊能図でなくても、これほど大きな日本地図と接する機会というのはめったにないだろう。幕張メッセの広いフロア一面に敷かれた地図には、各地の細かい地名まできっちり記されていて(特に、当時の首都だからか京都周辺は、ランドマークがびっちり書き込まれていた)、地図の巨大さとその細部の描写との振幅の大きさに頭がクラクラするほど。それ以外にも拡大されているがゆえに、通常サイズの日本地図では見えてこないものも見えてくる。たとえば、瀬戸内海にはこんなにも多くの島々があるということに初めて気づいたり、瀬戸内海が海というよりもむしろ大河に見えてきたり、そして何といっても、日本列島が思ったよりもずっと広いことに気づかされた。まだまだ自分が足を運んだことのない場所もいっぱいあるし……というか、行ったことのないところのほうがよっぽど多いのだ(とりあえず北海道・東北・北陸・四国・九州はすべて未踏)。「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」なんて嘘っぱちだよ、ほんとに。
ちなみにタイトルに掲げた「地図中心」とは、会場でも売られていた日本地図センターの発行する雑誌の誌名である(公式サイトはhttp://discus.jmc.or.jp/book/mapcenter/)。表紙には“「地図が好き」マガジン”と銘打たれ、ぼくの買った昨秋発行の「号外」では「伊能大図」の特集が組まれていた。
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帰り際に海浜幕張の駅前広場で、テルミンで『もののけ姫』のテーマを弾いている人を見かける。何だか不思議な光景だった。さすが、チバシティは一味違うなあ。