積書家エレジー

書評用の本が全然読み終わらないので、ここは一つ集中しようと未明の午前1時40分に近所のネットカフェに籠もる。ようやく3冊目を読了し、最後の4冊目にとりかかった午前5時すぎ、いきなり地鳴りがあったかと思うと、かなり大きな揺れが来て、思わず身構えた。揺れが収まったところで、入ったスペースのPCのディスプレイの画面をあわててテレビに切り替えると、東京23区は震度3との速報が。もっと大きかったように感じたのだが……。
それからまた気を取り戻して本を読み進め、3分の2ぐらいまで読んだのち、残りは毎度ながら都営大江戸線の車内で一気に読もうと、9時前に店を出る(しかしよくもまあ7時間近くも狭い部屋に籠もっていられたもんだ)。東中野まで出ようと乗った総武線各駅停車の電車は、さっきの地震による地下鉄東西線の一時運転見合わせの影響とかで停止信号が出て、中野駅に着く寸前にしばらく停車し続ける。窓は雨のため曇りっ放しで外の様子もうかがえないし、乗客も誰一人として言葉を発さないため、何だかかなり気味の悪い状況だった。まあそれでも5分ぐらいで(いや、長く感じただけで、本当はもっと短かったかもしれない)電車は動き出し、東中野に無事たどり着く。そこから大江戸線に乗ってとりあえず都庁前駅まで出て、反対側の両国経由の電車に乗り換えると(当駅始発のため最初から座れるというのと、こっちのルートのほうが反対方面の六本木経由の電車よりあきらかに空いているのだ)一時間もしないうちに本を読みきる。その後新宿まで出て、今度は中央線で帰路についた。
で、帰宅したところ、何とまあ、棚に積み上げてあった本や雑誌が四方八方から倒壊して、部屋は大変な状態になっていた。おそらく地震のあった時間に家にいたら、ぼくは確実に死んで……はいないとは思うが、間違いなく本の雪崩で生き埋めになっていただろう。あー、危うく難を逃れたと胸をなでおろす。同時に、自分はつくづく悪運の強い人間であるなと再認識。これも新聞記者時代に伊勢湾台風で行方不明になりかけたものの、無事生還した母方の祖父譲りのものなのかもしれない。
ただ、今回は難を逃れたとはいえ、やはり積み上げた本が地震の際に危険であることに変わりはないだろう。結局、蔵の持てない、蔵書家ならぬ「積書家」(セキショカとでも読んでください)はいつだって危険と隣り合わせなのだ。危険と隣り合わせでも本を所有しなくてもならないというバカバカしさ。ああ、やはり本を所有するとは何と恥ずかしいことだろうと言わざるをえない。

♪本は本とて なんになる
 男ライター まこととて
 平成余年は 春も宵
 地震起きれば 本も舞う
 お部屋もひとつ ほしいよね
 いえいえこうして いられたら
 書籍とライターの 物語
 お涙頂戴 ありがとう

おそまつ。
なおその後もう一度ネットで確認したところ、くだんの地震での東京23区の揺れは震度4と最終的に判断されたようだ。