Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

綿矢りさインタビュー(NHK総合『首都圏ネットワーク』)

夕方、たまたまテレビのチャンネルをNHKにまわしたら、綿矢りささんが、今週、3年半ぶりに新刊を発売するのを前にインタビューに答えていました。綿矢さんのテレビ出演はひょっとすると、3年前、前作『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞して以来ではないでしょうか。
ただ、出演したのは夕方の、しかもローカル番組だったため、ファンのなかには見られなかった人も大勢いるのではないでしょうか(一応、ウェブ上のテレビ番組表には告知されていましたが)。そこで参考までに、ここにインタビューの模様を録画テープからベタ起こししてUPしておきます。私もあわてて録画したので、冒頭が少し欠けていますが、インタビューの流れはだいたいつかんでいただけるはずです(それでも不正確なところもあるかもしれません。その点を御了承の上お読みください)。
以下、枠内が録画テープからの起こしです。インタビュアは内藤裕子アナウンサー。カギカッコ内は綿矢さんの発言、Nはナレーションを示します。

(冒頭、芥川賞受賞時の綿矢さんの映像が流れる。インタビューもその当時の話からはじまりました)
「緊張しすぎて、うれしいとかいう気持ちも吹っ飛んじゃって、真っ青でしたね」
「たくさんの人と会うことがすごく増えたんですけど、いちどきにたくさんの人と会うと、熱にあてられるっていうか、何かたくさんの人に会ったあとはふらふらになってた」
―― (芥川賞受賞時の)記者会見のときに、ちょっと不安だっていうことを言っていたのを覚えてるんですけど、綿矢さんにとってはどんな3年間だったんですか。
「結構まわりの人たちは、ゆっくりやったら、自分のペースで、っていうふうに言ってくださったんですけど、まだ自分のペースっていうのがわかってなかったんで、だから結構自分ばっかり焦ってたような感じでした」
「(新作は)その極限の焦りのなかでできたような感じだったので」
―― 極限の焦り?
「そうですね。落ち着いてないし、結構気持ちもふさいでたときに今回の本を書きはじめたので」
N:新作のタイトルは『夢を与える』。幼いころモデルになり、芸能界で成長していく少女・夕子が主人公です。
―― どうしてまた今回女の子のアイドルの物語にしたんですか。
「んーと、小説が、女の子が生まれてくる前からはじまるんですけど、生まれてすぐのときから仕事をしてるっていう、教育の現場……学校とは違う世界をもってるような女の子を書きたかったから、それで小さいときからできる職業って何かなって思ったら、モデルとか、芸能のこととか……っていうふうに思ったんで。それでこの世界を書いてきたいなと」
N:夕子は大手食品会社のCMに抜擢されたことをきっかけに人気アイドルになります。若くしてマスコミから注目された綿矢さん。夕子のモデルはもしかして自分自身なのでしょうか。
「自分の意識ではそういうふうに、経験とかは反映してるけど、自分自身っていう意識はまったくないです。たとえばスタジオがどんな雰囲気だとか、雑誌や新聞記者の方々がどのように仕事をなされるかだとか学ぶことができたんで、そういうことを……そうですね、ふつうの大学生活を送っていたら知らなかったようなことを知れたので、それを物語に生かしました」
N:やがて夕子は売れないダンサーと恋に落ちます。人気アイドルとして人々に夢を与える立場だった夕子。《私はこの愛を守ります》(『夢を与える』からの引用)。自分の夢を追いかけはじめたとたん、スキャンダルで築きあげてきたものを失ってしまいます。
(ここで内藤アナが、綿矢さん本人の前で新作の一節を朗読)
―― 綿矢さんのつむぐ言葉、一語一語を大切にしている部分っていうのは、どういうふうに……ポリシーというか、あるんですか。
「2作目まではすごくあったんですけど、好きな言葉、嫌いな言葉、引っかかってる言葉、使いたい言葉……。でも、3作目になってから、言葉自体がどういうふうな雰囲気をもつとか、品がある品がないとかいう以前に、勢いということ……その言葉の勢い、強さっていうのを重視しはじめました」
N:綿矢さんは去年3月、大学を卒業しました。卒業式ではすぐれた功績があったとして表彰を受けました。作家として書き続けることが、これからの綿矢さんに求められます。
―― 次は、そろそろいつごろ書こうかなっていう時期は決まってるんですか。
「うーん……書きかけるなら、すぐにでも書きたいんですけど、前のときにちょっと焦りは禁物だなって思ったので……何やろ……出てきそうになったら自然に書いていこうかなと思ってます」
「たくさん書きたいです、私は。書けるタイプじゃないみたいなんですけど、でもたくさん書いてる作家の方が大好きなので、そういうふうになりたいなって自分も思います」

インタビューのVTR放映後、内藤アナは、「これからも揺れ動く人の心を書き続けていきたい、見つめていきたい」と綿矢さんが言っていたのが印象に残ったとコメント。また、綿矢さんは今回が初めての長編とあって、執筆に疲れると手芸で熊のぬいぐるみなどをつくったりしていたとのエピソードも披露されていました。それを聞いて、わたしゃ萌え狂い死にしそうになりました大変ほほえましい話ですね。そんなふうにじっくり書かれた新作、私も早々に買い求め、心して読みたいと思いますっ。

夢を与える

夢を与える

【2月6日深夜追記】
まあ、予想はしてたけど、もとの映像がYouTubeにUPされましたね。削除される前にどうぞ。

でも、例の「熊のぬいぐるみ」のエピソード開陳の部分までは入ってませんね。きのうの放送で一番面白かったのは、あの話なのに。