この秋の褒章でケラリーノ・サンドロヴィッチに紫綬褒章が贈られると聞いて、山下洋輔が2003年に紫綬褒章を受章するに際し、評論家の相倉久人に言われたという言葉を思い出した。
受章の決定時、山下へ相倉から電話があり、《『山下も勲章をもらうようになったか』と言われるだろうが、賞を贈る側にもそれなりの事情があって、『こういう人にも目を向けています』とアピールしたいんだから、がっかりしないでもらってやりなさい》と言われたという。
これは二人の対談本に出てくるエピソードだが、相倉は同書で、自身も各種の賞で選考を担った経験から《選考委員や審査員たちの気持ちはとてもよく分かります。「自分たちはこういうものだってちゃんと評価できるんだ」というのを見せたいわけ》とも語っている(以上、引用は山下洋輔・相倉久人『ジャズの証言』新潮新書より)。
「こういう人にも目を向けています」「自分たちはこういうものだってちゃんと評価できるんだ」とは、紫綬褒章にかぎらず、最近の文化勲章や文化功労者の面々を見ていてもたしかに感じるところだ。