コスモス(秋桜)からコスモス(宇宙)へ

さらに昨日買ったCDについての雑感。
HALCALIのニューシングル「マーチングマーチ」は、彼女たち自身もさることながら、バックアップする側も手を抜かないいい仕事してるなーという印象。カップリングの「Highway to the Beach」は、高野寛BIKKE斎藤哲也によるNathalie Wiseが手がけた曲。公式サイトで試聴したところ、HALCALIにしてはやや大人びた雰囲気だなと感じたのだが、実際に聴いてみるとまた違った印象を抱いた。曲中、アルバム『ハルカリベーコン』の収録曲で同じくNathalie Wiseの手がけた「Hello,Hello,Alone」が引用されているのだが、手を抜いたという感じはまったくなく、見事に新たな曲になっている。
山口百恵の『COSMOS 宇宙』はもともと1978年にリリースされた盤で、最近、復刻・CD化された彼女のアルバムのうちの一枚だ。ちなみに今回復刻されたアルバムは全タイトル、初回盤に限り、LPリリース時の仕様を忠実に再現した紙ジャケットで(ソニーミュージックは同様の試みを昨年のYMOの再発時にも行なっている)、さらには付録として、アルバムと同時期に発売されたシングル(ジャケットも当時のまま再現)のカラオケを収めた8cmCDがつくというサービスぶり。これで定価2310円は安いだろう。
さて、ぼくが今回買った『COSMOS 宇宙』は、誰もが知ってるようなヒット曲が収録されているというわけでもなく(唯一この中からシングルになっているのは「乙女座 宮」一曲のみ)、ほかの作品とくらべると地味な印象すら受けるが、コンセプトアルバムとしての完成度は高く、平岡正明が《この盤には駄作がない》と絶賛しているほどだ(平岡『山口百恵は菩薩である』1979年)。ちなみにジャケットのデザインは宇宙というそのコンセプトにふさわしく横尾忠則が手がけたもの。
しかし表題作の「COSMOS(宇宙)」が、このアルバム発表の前年に山口百恵自身がリリースし、いまでもウェディングソングの定番となっている「秋桜(コスモス)」が元ネタだとは、うかつにもぼくは聴くまで気がつかなかった(この曲の間奏では「秋桜」のメロディが引用されている)。娘が嫁ぐのを翌日に控えた家の庭先に咲くコスモス(秋桜)という極小なるイメージを、一気にコスモス(宇宙)という壮大なイメージへと転換してしまったのが何ともすごい。こうした自作とのリンクに加えて、前述の著書において平岡正明が提示しているように、この曲とピンク・レディーの「UFO」や沢田研二の「ヤマトより愛をこめて」など同時期のほかの歌手の楽曲と関連づけることも可能なわけで、70年代後半の歌謡曲の世界の奥深さを改めて感じてしまう。