昨日新宿のタワレコで買ったCDの一枚『スペース・シアター EXPO'70鉄鋼館の記録』をさっそく聴いてみる。同CDに収録されているのは武満徹の「クロッシング」と高橋悠治の「エゲン」、それからクセナキスの「ヒビキ・ハナ・マ」の3曲。「ヒビキ・ハナ・マ」は、『the early gurus of electronic music:1948-1980』(ASIN:B00004T0FZ)という電子音楽のアンソロジーにも入っているが、この盤に収録されているのはまったくの別ヴァージョンで、これがおそらく原曲であり、『the early〜』に収められたヴァージョンではさらに色々な音が上からかぶせられ時間も短くなっている(ちなみに『スペース・シアター〜』版は17分22秒とかなり長い)。武満の「クロッシング」は、最後のほうに女声による合唱が入るのだが、これがちょっと怖い。子供が聴いたらその晩一人でトイレに行けなくなりそう。でもこういった曲を手がける一方で、同じ年には黒澤映画の『どですかでん』の音楽をつくっていたりするんだから、武満という人はつくづく幅の広い作曲家だったのだなと思う。
ところでこれらの曲が一体どのようなシチュエーションで流されていたのか気になって、手元にあった『EXPO70伝説』(メディアワークス、ISBN:4840212929)という本で調べてみたところ、鉄鋼館というパビリオンについて次のような説明があった。
「鉄の歌」をテーマに設計された音楽堂。円形の大ホールには天井、壁、床に1000個以上のスピーカーが配置され武満徹、クセナキス、高橋悠治の曲が毎日一定時間流された。宇佐美圭司によるレーザー光線の演出も話題に。
ああ、鉄鋼館といっても別に鉄に関しての展示がされていたというわけじゃなくて、純粋に音楽を聴かせる音楽堂だったのか。「鉄の歌」といわれてみれば、たしかにクセナキスの曲など金属音そのものだし、そこでようやく鉄と前衛音楽とがイメージの中で結びつく。それにしても1000個以上のスピーカーって……きっとそうとうの迫力だったんだろうなあ。まあ、何も知らないで入った、農協の団体旅行で来たようなおっさんたちなんかにとっては、たぶん拷問に近いものがあったんだろうけど。