今月は、安藤健二『封印作品の謎』(太田出版、ISBN:4872338871)、タモリ『タモリのTOKYO坂道美学入門』(講談社、ISBN:4063527239)、梅原淳『「80年代鉄道」の再発見』(中央書院、ISBN:488732149X)の新刊3本に加え、「懐かしのこの作品」枠として猪瀬直樹『ミカドの肖像 ―プリンスホテルの謎』(小学館ライブラリー、ISBN:4094600019)*1をとりあげた。「サブカルチャーガチンコ批評 書籍編」という連載タイトルにもかかわらず、サブカル本らしいサブカル本といえば『封印作品の謎』ぐらいで、あとはタモリ・鉄道・西武と自分の最近の趣味というだけで選んでしまったようなもんである(笑)。
とはいえ、選んだ時点では特に意識していなかったのだが、書評を書いているうちに、これらの本がまったく無関係というわけではなく、案外関連を持っているということに気づいた。たとえば、『封印作品の謎』と『ミカドの肖像』が〈タブー〉というキーワードで、『タモリのTOKYO坂道美学入門』と『「80年代鉄道」の再発見』が〈マニア〉というキーワードでそれぞれリンクするといった具合に。その意味で、今月号の書評は一冊ずつ独立したものというよりも、むしろ4冊分で一つの書評として読めるものになったのではないかと思う。
あと、今回の書評で特筆すべき点といえば、原則として用いないようにしてきた「僕」という一人称を『「80年代鉄道」の再発見』の書評にかぎって、初めて用いたことだ。どんなふうに「僕」が出てくるかは、本誌のほうでぜひ確認してください。
*1:この版は、第一部の「プリンスホテルの謎」を独立させたもの。書評執筆中にはまだ在庫があったのだが、いまネットで調べてみたら品切れになってしまったらしい。ありゃま。そんなわけで、読みたい方は全編が収められた『猪瀬直樹著作集』第5巻(小学館、ISBN:4093942358)のほうでどうぞ。