だいたひかると『異邦人』の共通点とは…?

今年はあらすじ本ブームの年でもあったわけだけれども、それを締めくくるようにTBSで『ほんの…おさわり劇場』という深夜番組が放映される。内容は、7冊の小説のさわりの部分を紹介した映画の予告編風の映像が流されたのち、詳細を山田五郎が解説し(司会は安住紳一郎)、さらには各作品ごとの推薦者がVTRでコメントを寄せ、それを参考にゲストが自分の気に入った作品を選ぶというものだった。なおゲストは勝俣州和土田晃之だいたひかる、そして安倍麻美といった面々。気になる作品(カッコ内は推薦者)はといえば、夏目漱石吾輩は猫である』(筒井康隆)、ツルゲーネフ『はつ恋』(TBSアナ・安東弘樹)、カフカ『変身』(岸田今日子)、ヘミングウェイ老人と海』(服部克久)、カミュ『異邦人』(筒井康隆)、太宰治走れメロス』(高田万由子)、芥川龍之介蜘蛛の糸』(デーブ・スペクター)。筒井康隆が2作も推薦人を務めているのは、『猫』のコメント収録の際、スタッフから番組で紹介する作品のリストを見せてもらった筒井がどうしても『異邦人』も自分にコメントさせてほしいと熱願したからだとか(ぼくとしては『異邦人』の推薦人はセイン・カミュで来るかとも思ったんだけど)。
最終的に、勝俣が『走れメロス』、土田と安倍が『変身』、だいたが『異邦人』を選び、各人収録後に感想文を書いて発表していた。安倍麻美が『変身』を読んで仮に自分が主人公と同じような境遇に陥っても、家族には理解してほしいといった感想を寄せていたのも興味深かったが、それ以上にだいたひかるが『異邦人』に「どうでもいい」という言葉が頻出するところに注目し主人公に共感を覚えていたのは面白かった。
でも、こういう番組ってどちらかというとTBSよりフジテレビの十八番だよなあ。山田五郎が解説のせいか『ペダンチックな夜』(昨年と今年単発で放映され、「5分間でわかる小津安二郎」「5分間でわかる大江健三郎」といった具合に著名な作家やアーティストをその分野に詳しい人が紹介するという番組)をどこか彷彿させたし。ひょっとしてあれのパク……あ、そうか、だから妹の安倍麻美が……。