よこはま・がっかり――『タモリの1977ハナモゲラ回顧録』

横浜・関内で友人と会う約束があり、そのついでに放送ライブラリーを訪れる。ここに所蔵されているラジオ番組で、以前からずっと聴きたかったものがあったのだが、ようやくきょうその望みを果たす。
その番組とは、『タモリの1977ハナモゲラ回顧録』という、タイトルどおり1977年に放送されたラジオ番組(地方民間放送共同制作協議会制作)である。1977年といえば、ちょうどタモリハナモゲラ語などの密室芸で一躍ブレイクを果たした年であり、この当時毒舌で売っていたタモリが一体どんなふうに世相を斬っているのか? とぼくはずっと気になっていたのだ。
しかし、これがまったくの期待はずれ。「回顧録」というタイトルどおり、1977年の一年間をタモリが女性アシスタントとともに、寸劇や当時の流行歌を挟みつつ振り返っているのだが、各できごとに対するタモリのコメントにはまるっきり毒もキレもなく、その上ことあるごとにしょうもない下ネタが出てくるというシロモノだったのだ。例をあげると、さだまさしの『雨やどり』が流れてきたので、当時痛烈なさだまさし批判を行なっていたタモリのこと、きっとここで容赦ない毒舌を浴びせかけるものかと思いきや、女性アシスタントがただ曲を紹介するだけでタモリからのコメントは一切なく拍子抜け。かと思えば、王貞治のホームラン世界記録達成をネタにした寸劇では、「王選手は『圧縮バット』を使っているそうですが、私のもっているのは、いわば『膨張バット』というべきもので……」と下ネタで落とすというありさまで、まったく笑うに笑えず。同時期に発表されたアルバム『タモリ』や『タモリ2』はいま聴いても面白いのに、この落差は一体どうしたことだろう。作家が悪かったのか。
そんな番組の中にあって唯一面白かったのは、当時激化しつつあった円高について、タモリ三遊亭圓生の物真似でコメントするというネタ。そういえば、『タモリ2』に収録されたハナモゲラ落語も圓生風だったなあ。