Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

センとブチとコージと

来年の北京五輪に向けて、野球日本代表チームのコーチ陣がきのう発表されました。星野仙一監督が指名したのは、田淵幸一(ヘッド兼打撃)、山本浩二(守備走塁)、大野豊(投手)の各氏。このうち、田淵・山本のふたりは星野監督の大学時代からの友人ですが、この三人といえば、こんな話を思い出します。以下、玉木正之プロ野球大事典』(新潮文庫、1990年)の山本浩二の項目から引用。

やまもと こうじ【山本浩二】(……)星野仙一田淵幸一と大学時代から仲のいい友人関係にあり、三人揃って川上哲治にゴルフを誘われたとき、一〇分前に川上家へ行った人物。定刻時間どおりにやって来た田淵が、「さすがに早く来たな」というと、「もっと早い奴がいるよ」といって山本が指さした先には、三〇分以上前から来ていた星野が、川上家の庭掃除をしていた――とは、三人の性格を語り分けるときに新聞記者が好んで用いる笑い話――だが、実話だというひともいる。

いまではこの笑い話が生まれたバックグラウンドを知らない人も多いでしょうから、一応補足説明しておくと、星野監督は、かつて読売ジャイアンツの監督として9年連続日本一を達成した川上哲治氏を尊敬していて、自らが中日ドラゴンズの監督に就任する際には、背番号をかつて川上氏がV9時代につけていた番号にあやかって「77」にしたほどなのです。そのことを思えば、星野監督が川上家に約束の時間よりも前に来て、庭掃除をしていたという話も信憑性が感じられますね。
それにしても、私はこの話を思い出すたび、いしいひさいちタッチで描かれた三人のキャラが思い浮かんでしかたありません。