今年秋、2016年の五輪開催地が決定します

 以下は、昨日付の速水健朗さんのブログより。

正月1日、2日と、MXテレビは連日オリンピックのドキュメント映画の特集で市川崑の『東京オリンピック』とレニ・リーフェンシュタールの『民族の祭典』『美の祭典』を放送していた。これをお正月にやるMXのセンスは捨て置けない。
 オリンピック公式フィルム - 【B面】犬にかぶらせろ!

 いや、今年10月のIOC総会で、2016年のオリンピック開催地が決定する(参照)ということを考えれば、それに立候補している東京のローカル局として五輪映画放映は当然のプログラムではないかと。それにしても、『東京オリンピック』はともかく、『民族の祭典』『美の祭典』というセレクトは石原都知事の趣味が多分に反映されているような……と考えるのはうがちすぎでしょうか。
 個人的に、東京MXテレビのセンスを感じたのは、年末から年始にかけて映画『がんばれ!!タブチくん!!』シリーズを連日放映したことです。すべて録画予約してから帰省したので、東京に戻って観るのが楽しみです。
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 2016年の東京オリンピックといえば、拙著『私鉄探検』を読んでくださった方から「とりあえず2016年の夏季五輪を東京が招請に成功しようがしまいが,東京五輪本は読みたいなあ」というリクエストをいただいているのだけれども、僕としては、「2016年の東京オリンピック」ではなく「2020年の東京オリンピック」であれば積極的に応援したいところ。その理由は、3年前(2006年)に出した個人誌に書いているので、セルフ引用しておきます。
 ちなみにこの文章は、2005年に2012年の五輪開催地にロンドンが決まった際、あるスポーツ紙に「2012年五輪はロンドンで さあ「2020TOKYO」」という見出しの記事(当該記事はこのエントリにも引用しました)が載っていたのを読んで思いついたことがもとになっています。

 ところで(中略)「2020年に東京でオリンピック」って、どこかで聞いたことあるなあ……と思ったのだが、はたと気がついた。
 そうか、『AKIRA』だ!
 大友克洋のあの長編マンガの時代設定は、第三次世界大戦が勃発した1982年から38年目の2019年。そのころ、かつて大戦で廃墟と化した東京の市街地では、翌2020年のオリンピックを目前に控えて競技施設が急ピッチで進められていたではないか。それが今回、状況こそ違えど、年代にかぎっていえば現実化する可能性が出てきたというわけである。
(中略)
 ぼく個人としては、冒頭の『AKIRA』ネタが実現するからという、ただそれだけの理由で、2016年よりは2020年に東京でオリンピックを開催してくれたほうがありがたい。いや、これは半ば冗談ではあるけれども、半分は本気でいっているのである。ぼくは、東京は『AKIRA』のイメージをオリンピック招致に向けて積極的に利用すべきだとすら思っている。なにしろ『AKIRA』の作者・大友克洋はいまや世界的なアーティストだ。プロモーションビデオの一本や二本つくってもらって、世界中にアピールすればそうとうの効果が期待できるのではないか。果たして石原慎太郎がどれだけマンガやアニメなどの文化について理解をもっているのかはわからないが、秋葉原の再開発や都主催の「東京国際アニメフェア」の開催などの“実績”をみるかぎり、オタク周辺のコンテンツに対してはかなり関心を抱いているようである。だったら、大友の起用にはなんの異論もあるまい。いますぐにでも実現してほしいものだ。そういえば、同じく世界的な映像作家である黒澤明は(ちなみに『AKIRA』のアキラ少年の名前はこの人からとったともいわれる)、かつて1964年の東京オリンピックの記録映画を依頼され、構想を練るうちに、頼まれてもいない開会式のプランまで描きはじめてしまい、ついには予算的に収拾がつかなくなって、監督を降板したという。できれば、大友にもその程度の身勝手さを期待したいところである。
 「東京はふたたびオリンピックを狙えるか?――こうなったら『AKIRA』の世界の現実化あるのみ!」(『Re:Re:Re: 近藤正高雑文集』Vol.4、2006年11月)

 2016年の東京オリンピック開催に向けた動きについては当ブログでも折に触れて言及してきました。

 また、ちょうど2年前の年明けには、メルマガ「週刊ビジスタニュース」にも「石原都知事がオリンピック招致にこだわる理由」(「週刊ビジスタニュース」2007年1月24日配信分)というコラムを寄稿しているので、よろしかったら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。
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 ところで、2016年の東京五輪招致にあたって東京都は昨年秋、当初予定していた築地市場跡地への五輪開催時用のプレスセンター建設を断念しています。このことは招致活動における一つの画期(あるいは快挙)ともいうべきできごとだったと思うのですが、くわしく報道していたのは僕が見たかぎりでは「MSN産経ニュース」2008年10月31日付の記事だけでした。
 東京五輪招致に対しては肯定・否定にかかわらず、マスコミも含め全体的にどうも人々の関心が薄いような気がします。このことはほかの候補都市との招致争いではあきらかに不利に働くでしょう。そう考えると、正月のMXテレビでの五輪映画放映は、世間に対する東京都の必死のアピールにも思えてきます。