神保町の書店で、伊藤昌哉の『自民党戦国史』がちくま文庫から上下巻で出たことを知る。本書については、この1月に日経ビジネスオンラインの「日刊新書レビュー」で『大平正芳――「戦後保守」とは何か』(中公新書)をとりあげたときに少し触れたばかりだ。まさかそれを受けて筑摩書房が復刊したというわけではあるまいが、この機会にぜひ多くの人に読んでもらいたい。
筑摩から復刊といえば、やはり最近、鈴木博之の『東京の地霊』がちくま学芸文庫から出ていて驚いた。というのも、その直前にNHKスペシャル『沸騰都市』最終回「TOKYOモンスター」内で放映されたアニメ(制作はプロダクションI.G。同番組の感想はこちらに書いた)において、主人公の若い刑事が読んでいた本がこれの元本(文藝春秋刊)だったからだ。まあこれもたまたまなんだろうけど。
『東京の地霊』はこれ以前に一度、文春文庫に収録されたものの(僕が持っているのもこの版)、ここしばらくは品切れになっていたようだ。それが今回、文春文庫版での藤森照信(鈴木とは東大でともに学んだ仲。解説で藤森は、鈴木の用いる「地霊」という言葉は重い、「土地の記憶」ぐらいでいいんじゃないかとちょっと茶々を入れているのが、二人の関係を垣間見せて面白い)の解説も再録して復刊されたのはうれしい。
ちくま文庫ではほかにも、僕も『私鉄探検』執筆の際におおいに参考にさせてもらった井上章一の『阪神タイガースの正体』が、拙著刊行と前後してラインナップに加えられていた(オリジナルは太田出版刊)。ちなみに文庫版の解説は松村邦洋。
余談ついでに、昨年末か今年の初め、あるテレビ番組で、里田まいがかばんをチェックされていたときのこと。彼女のかばんのなかから、やはりちくま文庫から近年復刊した本田靖春の『誘拐』が出てきたのにはびっくりした(何でも、里田はいつもかばんには必ず本を入れていて、空き時間に読んでいるんだとか)。里田まいが意外にも読書家だったという事実もさることながら、いったい誰に教えられて、この本を手に取ったのかが気になる。
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