年明け早々、新幹線技術のアメリカへの輸出に向けてひとつ進展があった。
米要求に応じ新幹線を頑丈に=JR東海、フロリダ輸出に向け (時事ドットコム)
フロリダ州への新幹線輸出を目指しJR東海が参加する日米鉄道技術基準合同検討会は、米国側が貨物列車との衝突を想定した車両耐久性の向上を要求していることに対し、米向け車両の強度を増すことを決めた。JR東海の葛西敬之会長が7日、名古屋市内で記者団に語った。米国には高速鉄道の安全基準がなく、日本などから意見を採り入れ法整備を進めている。
葛西会長は「(車体が)重くなることや、価格が上がるということもある」としながらも、フロリダ州への新幹線輸出をぜひとも実現したい意向で、米国の求めに応じることにした。
また、政府のインフラ輸出への取り組みについて「(重要性を)よく分かってくれている。着実に続けてほしい」と要望した。(2011/01/07-16:03)
ちなみにアメリカ側が、JR東海に車両耐久性の向上を求めていることがあきらかになったのは昨年末(時事ドットコムの当該記事)。
JR東海がもっとも参入に力を入れているフロリダでの高速鉄道計画は専用線だが、カリフォルニアなどでは、在来線(ちなみに現在のアメリカの鉄道のほとんどは貨物路線である)に乗り入れる計画もあるため、ほかの列車との衝突を想定した基準が必要ということなのだろう。
アメリカの高速鉄道計画をめぐる国際商戦では、ヨーロッパ勢が日本の新幹線について「エスカルゴの殻同然のもろさ」と喧伝していた。ここには、日本の新幹線は専用線を走るので衝突事故をほとんど想定に入れる必要がなく、その分、車両を軽くしてスピードアップを実現してきたという事情がある。これに対して、ヨーロッパの高速鉄道では、在来線にも乗り入れるため車両の強度の基準は厳しい。今回、JR東海がアメリカ向け車両の強度を増すことを決めたのには、他国のネガティブキャンペーンをかわし、少しでも商戦で優位に立とうという思惑もあるのだろう。