「時代を仕掛けた2010年物故者たち」補遺のようなもの(1)

 昨年12月29日にソフトバンク クリエイティブの「ビジスタニュース」に、拙稿「時代を仕掛けた2010年物故者たち」がUPされた。これは一年間の物故者を振り返るという企画で、2008年、2009年に続き今回で3回目となる。

 で、本稿がUPされた直後に、DMMでレンタル予約していた『けものみち』(須川栄三監督、1965年)のDVDが届いた。2010年に亡くなった池内淳子池部良小林桂樹が共演しているということで、くだんの原稿の資料用に予約していたのだが、けっきょく年末にはとても時間がなく、正月2日に観ることに。

けものみち [DVD]

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 面白いことは面白かったのだが、ラストの救いのなさといい、正月に観る映画ではないな(笑)。あと、池部良演じる悪党(フィクサーの周囲を動き回っている)が、骨董店を開くところといい、やはり昨年亡くなった“最後のフィクサー福本邦雄とどうもイメージがダブった(福本は骨董屋ではなく、画商だったけど)。
 昨年の物故者といえば、大晦日には高峰秀子の訃報(12月28日没)が流れたが、高峰の夫・松山善三の初監督作品『名もなく貧しく美しく』(1961年)では、高峰と小林桂樹が聾唖者の夫婦役で共演している。
 池部良が主演した映画『青い山脈』と、高峰の主演作『銀座カンカン娘』はいずれも終戦直後の1949年に公開され、服部良一作曲の主題歌(『銀座カンカン娘』は高峰本人が歌った)ともどもヒットしている。池部と高峰にはまた、俳優だけでなくエッセイストとしても活躍したという共通点がある。
 なお、『青い山脈』は1963年にも、西河克己監督(2010年4月6日没)により再映画化された。西河はこのほかにも『伊豆の踊り子』(1963年・1974年)、『絶唱』(1966年・1975年)などリメイク作品を数多く手がけ、彼自身「再映画化作品を撮った本数では、世界記録保持者だろう」と雑誌に書くほどだったという(「シネマトゥデイ」2010年4月8日付)。
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 『けものみち』以外にも資料として、立松和平(2010年2月8日没)原作の『遠雷』(根岸吉太郎監督、1981年)、ブレイク・エドワーズ(2010年12月15日没)監督の『ティファニーで朝食を』(1961年)のDVDを借りてきたのだが、いずれも原稿には反映できず。ちなみに『遠雷』には、立松和平が農協職員の役でカメオ出演している。
遠雷 [DVD]

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 映画関係ではこのほか、『いとこ同志』(1959年)などで知られるフランスの映画監督、クロード・シャブロルも昨年9月12日に亡くなっている。『いとこ同志』は、ゴダール監督の『勝手にしやがれ』などとともにヌーヴェルヴァーグの嚆矢として映画史に残る作品だ。
 60年代から70年代にかけてのアメリカ映画の革新を、関係者の証言によって振り返ったドキュメンタリー『イージー・ライダーレイジング・ブル』(2002年)によれば、60年代後半のアメリカン・ニューシネマの登場には、ヌーヴェルヴァーグをはじめとするヨーロッパ映画の攻勢に対し、旧態依然としたハリウッドはなかなか太刀打ちできなかったという背景があったそうだ。