『新幹線をつくった男たち』

テレビ東京開局40年記念ドラマ『新幹線をつくった男たち』を、一応参考のため見る。テーマは、ちょうど新幹線誕生から40年でもあり、科学教育局として開局したテレビ東京にふさわしいものだと思う。
内容としては、『プロジェクトX』に多少フィクションを交えて人間くさいドラマに仕立て上げたといった感じだろうか。とはいえ、新幹線の開発についておおまかなことはすでに知っているので、目新しい発見とか感動は特になかった。それでも三國連太郎十河信二を演じるのに、本人の風貌に似せるべく、わざわざ前頭部の髪を剃っていたのにはさすがに感心したが(まあ役のために奥歯を抜いたこともある三國連太郎なら、これぐらいのことはわけないのだろうけど)。
このドラマの放映直前には、先日の新潟県中越地震上越新幹線脱線事故を起こした余波で、一部ナレーションなどの変更も検討されたというが、ぼくが見たかぎりではあきらかに変更したと思われるような部分はなかった。ただ、新幹線を日本が世界に誇るべき技術としてとりあげるこの手の賛美は、もうそろそろいいんじゃないかという気がする。どうせ島秀雄にスポットを当てるなら、十河の国鉄総裁辞任に同調して国鉄技師長をやめてから以降、新幹線開業後にたびたび起こった事故に心を悩まし、ついには心筋梗塞で倒れたりするなど常に新幹線を気にし続けた彼の長い晩年(島秀雄が亡くなるのは東海道新幹線開業から34年後のこと)をドラマにしたほうがよかったのではないか。このドラマの原案となった高橋団吉の『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(小学館ISBN:4093410313)にも、そのへんについてはちゃんと記述されているわけだし。
ところで、ドラマのラストでは、東京駅にある「この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」という新幹線の記念碑が、同じく東京駅にある十河信二レリーフのあとに紹介されていた。しかし高橋の前掲書によれば、島は最後までこの碑文に抵抗があったという。それをわざわざ島が主人公のドラマのラストで紹介することもないのになあ……。