空港と音

 日経ビジネスオンライン連載「伊東乾の常識の源流探訪」での、伊東と作曲家・湯浅譲二との対談が面白い。その第2回、「「声の力」はマインドコントロールする!」と題する6月30日更新分では、1970年代に起こった大阪・伊丹空港の騒音公害訴訟に際して、神戸大学助教授だった安藤四一らが騒音被害を厳密に示すため、世界で初めて、音の人間への影響を脳まで含めてシステマティックに考えた上で丹念に調査を行なったという事実が伊東により語られている(当該ページはこちら)。こうした被害の立証をもとに、当時最高裁判事だった刑法学者の團藤重光が住民を擁護する少数意見を書いたという。
 空港と音(音楽)というテーマについては僕も、とくに成田空港とその建設反対闘争を中心に書こうと思い立ち、あれこれ資料を集めたりしてみたものの、テーマがあまりにもでかすぎて結局、この5年ほどほったらかしにしてしまっている。だが、上記の伊東の話を読んで、あらためてこのテーマにむくむくと関心が湧いてきた。
 ちなみに、くだんの拙稿を僕は「Music For Airport」と題して、ミニコミ誌で2回ほど連載していた(2回目を載せた号で雑誌自体を休刊させてしまったのだが)。ご存知の方も多いかと思うが、これはブライアン・イーノアンビエント・シリーズの第1作(1977年)のタイトルからとったものである。僕の記憶がたしかならば、イーノは、空港という空間に、騒音や飛行機の墜落といった死のイメージを感じ取って同作を発想したのではなかったっけ(そのへん、うろ覚えだが)。
 なお、伊丹空港の騒音問題は、関西国際空港建設が計画された背景にもなっていると、最近読んだばかり*1森功血税空港』(幻冬舎新書)のあとがきに書かれていた。もっとも、騒音問題自体は、エンジン技術の進歩によって、現在のジェット機の騒音は往年の国産プロペラ旅客機・YS-11よりも静かになり、とうの昔に解決済みだというのだが……。

血税空港 本日も遠く高く不便な空の便 (幻冬舎新書)

血税空港 本日も遠く高く不便な空の便 (幻冬舎新書)

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 先述の対談で紹介されている安藤四一氏は、霧島国際音楽ホールなど各地のコンサートホールの音響設計も手がけている方だという。最近ではこんな著書も上梓されているようだ。
コンサートホールの音響と音楽表現

コンサートホールの音響と音楽表現

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 以下、単なる身辺雑記。
 午後、とある企画について某氏とスカイプで打ち合わせをしていたのだけれども、途中でエラーが発生して途切れてしまった。やはりイー・モバイル接続には限界があるようだ。いいかげん、わが家にも“光”を導入するよう家族を説得しなければ。

*1:これまた日経ビジネスオンラインでの連載「日刊新書レビュー」での書評のため読んだものです。くだんの書評はこちらでどうぞ。