アポロ11号の月着陸といえば、僕らの生まれてくるずっとずっと前のできごと、ですが

 アポロ11号による人類初の月面着陸からきょうでちょうど40年を迎える。……といっても、これはあくまでもアメリカ東部時間での日付で、日本時間では明日、21日の午前11時56分がそのときとなる。
 YouTubeのタイトルのロゴもそれを記念して、おそらくきょう限定でアポロの月着陸船の入ったものになっている(画像参照)。同様のことはGoogleもやりそうなものだけど、いまのところ通常のロゴのままだ。
【追記】21日午前中に確認したところ、Googleのホームも「月面着陸40周年」のデザインになっていた。
アポロ仕様のYouTubeロゴ
 アポロ関連では当然ながらNASAも公式サイトに「Apollo 40th Anniversary」というページを開設しており、1コンテンツとして、40年前とまったく同じ日時に、7月16日の打ち上げから25日の帰還(いずれも日本時間)までアポロ11号の全行程における音声記録を発信中である(こちらで聴けます)。
 ところで、アポロの月面着陸の2日前の7月19日には、長崎県佐世保北高校でバリケード封鎖が行なわれている。
 この事件については、当事者である村上龍が『69 sixty nine』(1987年)で描いているが、僕はこの小説を高校時代に初めて読んだとき、まったく同時進行のできごとなのに作中ではアポロ11号について一言も触れられていないのはなぜなのか、気になったものだ。単に村上龍が関心がなかっただけなのか……。
 肝心のアポロの月着陸当日、21日には村上は事件の参考人として警察に連行されており、小説では、自宅に刑事がやって来たのはちょうどアイスキャンディーを舐めているときだったというふうに描かれている(肝心の本を引っ越しのときに処分してしまったので、引用できないのが残念!)。そのとき、アポロのテレビ中継を見ていてもおかしくはないような気もするんだけどなあ。

69 sixty nine (文春文庫)

69 sixty nine (文春文庫)

■この小説、いまは文春文庫から出てるんですね。僕が読んだのは集英社文庫版でしたが。ちなみに初出は、集英社女性誌『MORE』。若い女の子が読む雑誌の連載小説に「69 sixty nie」なんてタイトルをつけるとは! と、集英社文庫版の解説で林真理子か誰かが書いていた記憶があります。
  ■
 月面着陸についてちょっと調べようと、講談社の『昭和 二万日の全記録』という全集の第14巻をパラパラ見ていたら、1969年7月18日の項目に、《米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、沖縄米軍基地の毒ガス漏出事故により約二五人が入院と報道》とあるのを見つけた。これって、手塚治虫の『MW』のもとになった事件だよなあ。
MW(ムウ) (1) (小学館文庫)

MW(ムウ) (1) (小学館文庫)

MW(ムウ) (2) (小学館文庫)

MW(ムウ) (2) (小学館文庫)

 ついでに、前掲『昭和』にアポロ関連で転載されていた作家・野上弥生子の日記(1969年7月17日付)が印象に残ったので、孫引きしておく。

人類としてははじめての仕事で、またアメリカの為にはこれ以上すばらしいショウはないわけだし、その成功が見守つたわけである。もとよりそれが当然である。しかし一つの悪魔的の興味は、うちあげのしよつぱなから失敗させ度いやうな、少くとも月着陸からそれを離れて母船に戻つたりのプロセスのあひだに、なにかのミスで完全な遂行が阻まれたりの光景を待ち望み度い気持もある。アメリカの世界に対する驕慢をうち挫くのにはこれは最良の機会でまた最上の方法といふべきであらうから。
――『野上弥生子全集』第Ⅱ期 第十六巻 岩波書店

 なお、1885年生まれの野上はこのとき84歳。彼女はその16年後の1985年、満100歳の誕生日を目前に亡くなっている。
■ちなみに、本エントリのタイトルの元ネタはいうまでもなくこれであります。

アポロ

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