国民栄誉賞の賞味期限

 福田首相はとうとう国民栄誉賞を授賞しないまま辞任を表明してしまった。父親の福田赳夫が首相時代に創設した賞なので一度ぐらいは出すとは思っていたのだが。実際、北京五輪の金メダリストが受賞するのではないかという憶測もスポーツ紙などでは出ていた(僕としても、これは安倍内閣の頃だが、阿久悠が亡くなったときには、きっと国民栄誉賞が出るだろうと思ったものだ)。
 とはいえ、国民栄誉賞はもともと、その最初の受賞者である王貞治が、当時の叙勲者の標準年齢を大きく下回るほど若かったことから新たに制定されたものだといわれている。
 この説が正しいとすれば、近年、叙勲者の年齢制限が緩和され、若年者に対してもスポーツで著しい成績をあげた者を中心に紫綬褒章が授与されるようになったいまとなっては、国民栄誉賞の使命はもはや終わってしまった、ということもできるかもしれない。
 ※写真は、植村直己が失踪宣告後に授与した国民栄誉賞の賞状と盾および記念品(田村耕一作「竹林と鷺壺」)。今年10月9日、東京板橋区植村冒険館にて撮影。
植村直己の国民栄誉賞(2008年10月9日、植村冒険館にて)