新幹線輸出に対するJR東海と総合商社の「温度差」

 新幹線輸出といえば、東海道新幹線開業から45年を迎えたきょうの中日新聞には、来月16日にJR東海が名古屋で高速鉄道シンポジウムを開催するという記事が出ていた(同記事はネットにも掲載されていた→ここ)。新幹線の海外輸出を視野に、各国の在日本大使館員をはじめ国内外の関係者を招き、自社の新幹線技術をアピールするのだとか。
 ただ、JR東海としては先のエントリで紹介したブラジル、あるいはやはり高速鉄道建設の計画があるベトナムへの輸出には消極的で、それよりもオバマ政権によるアメリカ各地での高速鉄道構想に主眼を置いているようだ。中日の記事によれば、ブラジルとベトナムの計画はコストがかさむ可能性が高く、アメリカほどの契約社会ではない分、導入後のリスクは避けたい、ということらしい。
 また同社は、車両だけでなく、軌道、信号などもふくめた上下一体システムの売り込みを狙っているという。これには、車両と軌道は日本製、分岐器はドイツ製という混成システムを採用した台湾高速鉄道*1でトラブルが絶えなかった苦い経験が反映されている。
 ただ、こうしたJR東海の意向に対して、同じく新幹線の海外への売り込みを進めている総合商社とのあいだには温度差があるらしい。これについて、くだんの記事は以下のようにまとめていた。

 「混成システムで生じた不具合の責任を負わされたくない」とするJR東海に対して、住友商事は「利益が見込めるなら一体でも分離でも構わない」と温度差がある。国交省鉄道国際戦略室は「どちらにしろ、国として支援するのみ」という。
 コスト面でも、商社側が「地球温暖化対策の一つととらえ、ハードとソフトで支援を受けられれば」とする一方、JR東海幹部は「上下一体で売れても保守管理で金がかかるなら手を引く」。同床異夢ともいえる駆け引きは、すでに始まっている。

 あくまでもシステム一式の輸出をめざすJR東海は、日本の製造業をこれまで支えてきたとされるいわゆる「摺り合わせ型」的な方式にこだわっているともいえる。ただそれが、「水平分業モデル」(「組み合わせ型」とも呼ばれる)の本場であるアメリカにはたして通用するのかどうか*2、気になるところだ。

*1:あくまでも日本とヨーロッパの混成システムなのだから、さも日本のシステムが全面的に採られたかのような「台湾新幹線」という呼び方は詐称だと思う。

*2:「摺り合わせ型」と「水平分業モデル」の違いについては『日経ものづくり』誌のサイトの解説がわかりやすい。ちなみに同誌10月号の特集は「日本の鉄道技術」だとか。