Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

中身が先か入れ物が先か

 建築家の鬼頭梓20日死去したとの報あり。82歳。前川國男の弟子筋にあたる人で、とりわけ図書館建築において多くの作品を手がけており、代表作に日野市立図書館(東京都)などがある。
 そもそも日野市立図書館は1965年に一台の移動図書館によって活動が始められ、その後、都電の廃車を利用した最初の分館が生まれて以降、市役所の出張所内などに分館が次々と増えていった。鬼頭氏の設計による現在の図書館が開館するのは、移動図書館による活動開始から8年後の1973年のことである(その経緯についてはこのページにくわしい)。
 まず図書館という機能そのものが先に生まれ、その入れ物を最後につくったというのが日野市の図書館のユニークなところであり、鬼頭氏もまたそこに惹かれて設計を引き受けたのだった。この事例からは、いわゆる「ハコモノ行政」とは正反対のベクトルの発想が見出せる。